【覆面取材】東伊豆“超絶ロケーション割烹温泉”の魅惑[横浜藤よし 伊豆店]

『温泉批評』編集長の現地レポート③

温泉を独自のスタンスで論じる雑誌『温泉批評』の編集長が現地潜入するスペシャル覆面レポート。第3回目は静岡県・伊東温泉です。

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 現地レポート②で取り上げた大滝温泉『天城荘』は、伊豆のなかでも異彩を放つロケーションの宿だが、今回紹介する『横浜 藤よし 伊豆店』も、ロケーションでは全く引けをとっていない。

 住所が伊東市なので伊東温泉と銘打ってはいるが、温泉街とはかなり離れている。川奈ゴルフコースの南西の小高い丘に位置しており、最寄駅でいえば伊豆急行線の富戸だ。伊東駅からだと車で15分ほどかかる。

 その門前に立てば、思わず「こんなに広いのか!?」と誰しも驚嘆の声を漏らすだろう。

 いったいどこまでが敷地なのか定かではないが、軽く東京ドームのグラウンド分くらいはありそうだ。瓦屋根の建物が、4つ、いや5つはあるだろうか。これで客室数が4というから、たまげるではないか。

 この日に泊まった客室棟の入り口(車の後ろ)はこんな感じで、完全に離れである。

 どうみても一軒家風の玄関を入ると、広めの土間があり、客室も2部屋。すでに布団も敷いてあった。客室専用の湯舟(もちろん温泉)も用意されている。

 バルコニーに出ると、相模湾も見渡せるいい雰囲気で、う~んリゾート気分。

 ここまで読んで、“さぞ高いのでは?”と思った人も多いだろう。それが平日1泊2食のスタンダードで、約2万円(1室2名時の1人分)。ロケーションだけで見れば非常にお得感がある。

失われた混浴露天風呂

 温泉はすべて貸切で、3カ所に分散している。

 まずはメインの「新相模の湯」へ。宿泊棟から出てちょっと坂を上がったところにある。この入口からしてとても見晴らしがいいので、期待して湯舟へと急ぐと⋯⋯。

 湯舟は塀に囲まれ、正面にガラスを配しているとはいえ、開放感がいまひとつ。せっかくのロケーションなのにもったいないのだ。

 この宿はかつて混浴宿で、この湯舟も広くてあけっぴろげな混浴露天風呂だったが、2015年にこのような貸切風呂に改装された(混浴はここでも密かに消滅していたのだ)。

 源泉温度は48.6℃で、冬場などは特に温度維持が難しく、落ち葉対策も必要だったようだが、なんとか開放感は残して欲しかった。

 ともあれ、すべての浴槽でかけ流しを実現しているのは素晴らしいわけで。
 伊豆では珍しい、適温の硫酸塩泉に「ん~~ッ!」と声が漏れる。

湯めぐり=外歩き

 この宿では、ハシゴ湯をするときはいったん浴衣に着替え、外を数分移動しなくてはならない(雨の日は少々鬱陶しいかもしれない)。山の斜面のほうへ歩いていくと現れるのが、「なごみの湯」。有料貸切とあるが、これは日帰り湯の場合の話で、宿泊のときは受付で無料予約できる。

 この浴舎にも一棟をあてているので、暖簾をくぐるとなにやら待合室のような空間が。なんという贅沢なつくりか。この奥にもまだ空間が続く。

 最奥部に現れるのが、この湯舟。浴舎に比べると小ぶりで、景観こそ望めないが、瓦と白壁に囲まれ、伊豆の大名にでもなったような雰囲気がある。

 なごみの湯の上にあるのが「女神の湯」だ。こちらは巨石で囲まれた湯舟で、2、3人向け。

 そこからさらに道を回り込んでいくと、「春夏秋冬の湯」と名付けられた4つの浴舎があるが、それぞれの季節感を出しているわけではなく、すべての湯舟はこんな感じ。

ところどころに漂うB級感

 さて、これまでの写真を見てくると、広い敷地に豪壮な和の建築と貸切風呂の贅沢さ具合がわかるが、この宿には、それとは別に不思議な味わいがある。たとえば、この写真。

 童話のウサギのキャラクターだろうか、敷地内にはこのテのものが散見され、ひと時ほのぼのと力が抜けるのだ。

 そういう観点で施設内を見ていくと、風呂桶や足拭きマットが家で使っている(スーパーで売っている)ものと同じだったり、柱や梁の建てつけが日曜大工風であったりと、随所にB級感が漂っていて、実に愉快なのだ(笑)。

 フロントでは芸能人のサイン色紙や小物、折り紙などが所狭しと並んでおり⋯⋯この感じはいったいなんなのだろう⋯⋯と、その下に目をやれば、子供がノートに書いた似顔絵が切り取られ、セロテープでずらりと貼ってあるではないか。

 宿を仕切る若女将は、和服が似合う話し好きの美人なのだが、なんと旦那さんが東欧出身で、5歳の娘さんがいる。

 このハーフの娘さんが実に可愛い盛りで、夕食時間に食事処のあたりをウロウロしているものだから、思わず声を掛けて遊んでしまった。

 この愛娘の存在が、宿の雰囲気を特異なものにしているようなのだ。随所に漂うB級感は、“ファミリー感”でもあるのだった。

 大人の雰囲気でゆっくりしたい、というムキも多いだろうが、若女将親子の微笑ましき成長を見るのも一興ではないか。そういうファミリー感を隠していないところが、この宿の魅力にもなっている。家族経営ならではの良心的な料金設定、ということも言えるだろう。

これでもか、の魚介づくし

 話を戻そう。食事処にも折り紙やプーさんがいるが(笑)、基本はあくまで和だ。

 そして夕食はというと、伊豆らしく魚介づくし。

 刺盛りのほかにもムニエル、酢漬け、煮物、焼き物、鍋⋯⋯もちろんステーキも出るが、この大漁感は半端ではない。

 それもそのはず、宿名にもあるように、横浜にある割烹『藤よし』の、あくまでここは伊豆店(割烹旅館)なのである。食事がメインと考えていることは間違いない。お味のほうもさすがに伊豆、新鮮である。

 だが、ここの真価は、朝食にこそ現れる。
 これって、夕食じゃないの? というほどの、再び魚介のオンパレード。

 夕食の食材も活かしながら、あら煮やサザエ壺焼き、七輪焼き、ホタテ、おかしらの味噌汁などなど。思わず朝から日本酒をオーダーしたくなってしまうのだ。朝夕食つきというよりも、夕食2回つき(笑)、といった趣きだ。

 ロケーション重視、離れ好き、湯めぐり好き、貸切風呂好き、魚料理重視、そしてちょっとB級好き、子供好きという要素がすべて当てはまる方には、最適な宿といえるだろう。

海底温泉でかけ流し!?

 さて、翌日の立ち寄り湯には、やはり伊東周辺の湯を選んだ。

 まずは、一生に一度は行こうと思っていたのに未入湯だった、『ホテルサンハトヤ』の海底温泉「お魚風呂」。子供の頃、テレビCMでいやというほど流されていた、あの湯舟である。

 日帰りで行く場合は、「ハトヤ大漁苑」から入り、1人2000円かかる。

 そしてこれが、かの海底温泉。

 さすがに一見すると、「おお!」となる。巨大なウミガメも泳ぎ、ほとんどこれは水族館。魚を眺めながら湯に浸かるのはオツなものではないか。

 が、強い塩素臭が鼻をつく。判定キットで調べてみたら、プール並みの塩素反応があった。外には露天風呂があるのだが、そちらも同様だ。平日で他に客はいなかったから、もう少し量を加減してもよさそうなものだが、そんな微調整はしていないらしい。ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉の源泉は、ほとんど原型をとどめていないように思えた。

 まあそんなことは予想していたというか、大型ホテルのアトラクション温泉ともなれば大勢の人が訪れるわけで、循環風呂にしないと衛生上問題がある。

 しかしである。この施設は電話で聞いても、受付に聞いても「(源泉)かけ流しです」と説明するし、日帰り温泉のガイドブック(まっぷる等)でも、“すべての浴槽がかけ流し”と謳っている。なぜそんなことになっているのか、理解し難い。

 浴槽内に循環用の吸引口があって稼働しており、強い塩素反応があるこの施設は、“断じてかけ流しではない”と、『温泉批評』編集長として言っておきたい。もし異論があるのなら、いつでも連絡をいただきたい。

防空壕と五右衛門風呂

 というわけでそそくさと移動、こちらは間違いなく源泉かけ流しで定評のある『大東館』へ。いまや伊豆でも希少の、混浴露天のある『陽気館』の隣である。

 ここでまず特筆すべきは、宿の中にまさかの防空壕があること。

 もちろんライトアップされていて安全に歩けるが、第二次世界大戦中に実際に使用されていたホンモノ。奥までは行けないが、その長さは300mもある。ちょっと怖いもの見たさの探検気分だ。

 この先に貸切五右衛門風呂、さらに貸切寝風呂と大浴場、そして館外に貸切露天風呂があって、なかなか湯めぐりが楽しい。貸切り露天風呂は、緑も豊かでこんな雰囲気。

 すべての湯舟には、自家源泉の単純温泉がかけ流されている。伊豆の仕上げ湯としてはもってこいだ。
 しかも日帰り料金700円ですべての湯舟に入れるので、これは安い。

 伊豆の2回目は、ちょっとユニークな温泉が並ぶこととなった。玉石混交の東伊豆は、やはり目が離せないエリアだ。

基本情報

宿名:横浜藤よし 伊豆店
住所:静岡県伊東市富戸1305-8
URL:http://www.fujiyoshi.com/

宿名:ホテルサンハトヤ(ハトヤ大漁苑)
住所:静岡県伊東市湯川堅岩572-12
URL:http://www.sunhatoya.co.jp/

宿名:大東館
住所:静岡県伊東市末広町2-23
URL:http://www.daitokan.jp/

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二之宮 隆

二之宮 隆

『温泉批評』編集長。週刊誌、小説誌を経て『ブラボースキー』『soto』『マイルスを聴け!』『画帖 月百姿』など多数の雑誌・書籍にかかわる。ぬる湯・交互浴を好み、入湯源泉数は1100を超えた。