なるほど、製剤の仕組みはよくわかった。続いて、調香室へ。
温泉地の匂いや情緒を香りで表現
待っていてくれたのは、製品開発部・調香師の佐々木大輔さん(36歳)だ。
「サッカーチームに入っており、休日はディフェンダーとしてボールを追っていますよ」という入浴剤とは無関係のトークを挟みつつ、気になる入浴剤の話題へ。
「やはり、現地の情報を香りで表現するのが難しいですね。温泉地ごとに差別化を図らないといけないので」
佐々木さんの仕事は、温泉地の匂いや情緒を香りで表現することだ。前述したように、温泉のお湯の香りを再現するわけではない。
「たとえば、これをちょっと嗅いでみてください」
「現地で見かけた写真の青葉の匂いとかなり似ているんです」
おお、青臭い! ほかにも、バーチタール(木を燻したような香り)という香りを嗅がせてもらった。
「ひとつの商品につき、計50〜60種類を組み合わせるんです。この部屋だけで2000〜3000種類の香りの原料があります。再現できない香りはないでしょう」
おお、大きく出ましたね。
ひどい花粉症だが、調香はできる
最近は機械で匂いを分析する技術が発達してきているが、やはり最終的には人間の感覚がものを言うそうだ。
頭で想像しながらひとつひとつを加えてゆき、最後に確認作業を行って微調整をする。
「科学的なデータに感覚を加えるかんじですね。比率としては感覚の方が大きい。僕の鼻はとくべつ敏感じゃないけど、訓練されてますから」
じつは佐々木さん、ひどい花粉症で春先は鼻水が止まらない。常に鼻をかんでいる状態だが、それでも調香はできる。すべて頭に入っているからだ。
最後に、杉浦さんが浴槽ルームを案内してくれた。FRP製が8つ、ホーロー、人工大理石、ステンレス、ヒノキがそれぞれひとつずつ。別の部屋にユニットバスも3つある。
新商品の開発やリニューアルにあたって、杉浦さんは自分で何度も入って完成度を高める。
というわけで、取材は終了。
「日本の名湯」シリーズは温泉の成分をできるだけ再現し、それに温泉地の雰囲気や情緒を香りで加えていることがわかりました。
いやあ、勉強になりました!
———————————
結論
温泉のお湯そのものではないが、トータルで温泉地の気分を楽しむ商品、すなわち温泉入浴剤は総合芸術だったのだ。
本記事の情報は記事掲載時のものであり、現在とは異なっている場合がありますので、予めご了承ください。
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