バスクリン「日本の名湯」シリーズ、どうやって温泉のお湯を再現しているの?

バスクリンの「日本の名湯」シリーズが今年で発売30周年を迎えた(初めて世に出たのは1986年!)。現在、全国16温泉をモデルにした入浴剤は大ヒットしているが、そもそもどうやって温泉のお湯を再現しているのだろう? 開発にあたる担当者に裏側の話を聞いてみた。

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再現が一番難しかったのは道後温泉

さて、ここからが本番だ。

忠実に各地の温泉を再現するためには、「お湯のイオン成分」、「湯ざわり」、「温泉地の情緒」という3つのアプローチで近づけるという。

杉浦さんは製剤担当だ。大学では化学工学を専攻し、卒業論文のテーマは『ピシアスティピティス菌を使って糖を分解してエタノールを効率的に抽出する方法』。意味はよくわからないが、どうやら名湯マスターになるべくしてなった人らしい。

現地で取ったメモの写真
現地で取ったメモ

製剤担当は取り入れる成分量を決め、調香担当は温泉地の「雰囲気」を香りで再現する。

そう、入浴剤はてっきり温泉のお湯の香りを再現するのかと思っていたら、硫黄泉などを除けば、お湯の香りはほぼみんな同じとのこと。だから、成分は近似させるものの、香りは「雰囲気」なのだ。

温泉分析が表示されているパソコンの画面の写真
理論値と分析数値との対比が離れているとダメ

草津温泉の成分は再現できないのでバスクリンでは商品化していない。

「本気で再現したら家庭の風呂釜が痛むぐらいの硫黄濃度ですから。草津の入浴剤を発売しているメーカーもありますが、あれは気分やイメージ(笑)」

さらに、100均の商品などは同じ成分の粉で香りと色だけ変えていろんな温泉名をつけて販売しているのがほとんどといった裏事情も教えてもらった!

配合成分が表示されているパソコンの画面の写真
他社商品の配合成分も研究

ちなみに、厚労省の規定では、200リットルのお湯に100グラム以下でつくらなければならないので、あまり高濃度にすることは出来ないということ。

しかし、実際の温泉は濃度が濃く、たとえば嬉野温泉のお湯は1000ppmを超えている。この濃度差はどうしても埋められない。

「そこで注目したのが、つるつる、すべすべ、キュッキュという湯ざわり。水溶性高分子や油性成分などの組み合わせで、低濃度でも湯ざわりを似せることに成功しました。配合の妙があるんです」

では、再現が一番難しかった温泉はどこだろう?

道後温泉ですね。あそこはpHが高くて、浸かるとつるつるしてやわらかいお湯が特徴。でも、入浴剤でpHを上げると水道水のカルシウムが白く凝固して浴槽がざらざらになっちゃう。それをアルカリが高くても出ないような方法を苦労して見つけました」

また、パッケージにはその温泉地を象徴するものが描かれるが、温泉地とバスクリンでイメージが食い違うこともあるという。

「我々としては、乳頭温泉郷と言えばあの白いお湯の鶴の湯をイメージすると思っていたのですが、温泉地側からブナの原生林を載せたいということで、現在のパッケージになったんです」

道後と乳頭の商品の写真
それぞれ苦労した道後と乳頭
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